別に離婚の調停をしているわけでもない。もめごとがあったわけでもない。重たい雰囲気のその建物は実に約四十年振りだった。白い建物と思っていたが記憶違いだったのか。薄茶色だった。建物を出て海を間近にする公園まで歩いた事を覚えている。 玄関の扉を開けるとそこは空港ゲートのようだった。ガードマンが数人。手荷物はX線透視装置を通す。自分自身もセキュリティゲートをくぐらないと入れない。この建物には刃物でも持ち込む輩が居るのだろうか。そんな事態を恐れているのかもしれない。 四十年以上も昔に何の罪でここに来たのだろう。罪状名は憶えていないが何をしたのかは覚えている。まだ十八歳だった。親元を離れて一人住まいを始め…
11月中旬になり、魔女見習いの家づくりもいよいよ仕上げ段階になってきました。今回の作業は壁の漆喰塗りでございます。というわけで。まずはお山の学校で使用している漆喰の紹介などから。左、村樫の漆喰で20キロ入り。必要な分をバケツなどに取り出し、自分でこねて使用し
街行く人はただ思うだろう。これは何なのだろう。空に喧嘩でも売っているのかと。そして風が吹いても倒れないようにしてほしいものだと。パイプの骨が為す役割に多少なりとも想像がつく人は更に思うだろう。何かを傍受しているのだろうかと。被害妄想の傾向がある人は更に思うであろう。何か光線でも発射して密かに気に入らない人や物をこの世から抹殺しているのだろうか、と。スパイ映画の好きな人は更に思うだろう。きっとここはCIAやMI6のアジトであると。そんなすべては普通の感覚なら正しい。そもそも異様。これはまるで弁慶の七つ道具だ。これを誰かが操作するのであればその人のは間違えなく変人だろう。自己中心的なのか、殻に籠も…
●ホテルカイザリン 近藤史恵 光文社 2023年 普段あまり本を読まない妻が「この本を読みたい」というのも珍しい事だった。図書館に申し込んだら数日で電話が掛かってきた。前回の閲覧が終わり返本されたという。奥付の履歴スタンプを見ると今年の十月に納品された本は妻で5人目となる。貸出期限は二週間なので早いペースで貸本が回っているようだった。 作者さんの名前も知らなかったが、履歴を見るとミステリーの著で様々な誌面に投稿され賞を得ているようだった。話題作だったのだろう。妻は何故この本に行きついたのか、アンテナが高いなと思う。 八作の短編集だった。片意地張らない文章はからだにすっと入ってきた。主人公のパリ…
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