鯵の開き
宅急便が届いた。思ったよりも重く、手にした箱は冷えていた。あ、クール宅急便か。 学生時代、自分は容姿が劣る事を十分認識していた。それが僕を引っ込み思案にしていた。特に女性はやたらに眩しく見えた。お洒落な学校だった。もう誰もが制服姿の女子高生ではなく大人の女性だった。アクセサリーや香水の香りが更に僕を緊張させた。自分は全く委縮した肉の塊だった。彼女達が近くを通り過ぎただけで下腹部に熱いものを感じた。頑張って話しかける。自分でもわかるほどに顔が赤くなっていた。いくつもの憧れが風船のように大きく膨らんで来たが、途中で萎むか、手を離れて飛んでいってしまった。…本当はもう少し前向きなはずなのにな、という…